日本国際情報学会 学会誌       編集後記

 

  

   編集後記

 今回の第4号の編集においては、特に企業内研修(企業内大学)、情報リテラシー教育など人材開発分野に重点を置いて論文を集めた。会員の協力によって多く応募があり、その中から優秀な論文を選ぶことが出来た。巻頭論文の『日本型「企業内大学」の発展』では、今日の企業内研修ではキャリア形成支援に力点が置かれているとの指摘がなされ、従来からある“経営戦略との連携” “全社員能力の底上げ” “経営幹部育成”とは違った“自律する組織人”の育成を目指す研修の時代に入ったとの意見が、特に興味深い。

 さらに、日本人材育成学会の三木佳光文教大学国際学部教授から寄稿論文をいただいている。これまでの企業は従業員を“同一・均質・同質”に扱う一律管理が主であったが、グローバル時代の企業経営では少子高齢化、個人意識の変化等への対応といった多様な人材管理が必要となると力説されている。そして、多種多様な考え方を尊重する企業風土の醸成と、優秀な人材を調達・確保できる企業求心力を強化するためのダイバーシティ・マネジメントが必要であると述べられている。

 「大学のキャリア教育における情報リテラシー科目の役割」は、大学新入生のコンピュータスキルに変化が生じていることを想定し、それを具体的なデータによって裏づけている。そこでは、平均的なスキルが向上する一方で、分散が大きくなっていることが確認されたが、その事実を踏まえて大学における情報リテラシー教育の設計および実施における困難さを指摘するとともに、情報リテラシー教育の意義と役割を強調し、具体的施策について示唆を行った労作と言えよう。

 一般論文では、環境問題で「ヨーロッパにおける水環境政策への市民参加の仕組と環境情報の役割」が取り上げられた。「EU の水政策の枠組を決める際の公衆の参加の仕組及びこれまでの試み」は、我が国の行政施策に対する国民・市民参加制度を構築する上で参考になると考えられる。

 以上、多くの投稿論文から上記の4論文を載せた第4号を会員に配布することが出来て、いま一安心しているところである。しかし、ここで一言お詫びをしておきたい。実は、私はこの第4号に「企業内集合研修の現状と問題点・・・経営大学院との競合関係」を載せると編集委員の方々に明言して資料を集め、かなりのインタビューを行なっていたのである。しかし、時間に追われて簡単なメモは書けても、これを論文として完成させることが出来なかった。したがって、私は次回までに論文を書き上げ、第5号に応募することにいたしたい。会員の方々のみならず、これまで私の調査に協力して下さった方々にも第4号をお送りして、これをお知らせする次第である。

       編集委員を代表して、五十嵐雅郎             2007年9月28日