『Voice』は総力特集として「北朝鮮工作の真相」を編んでいます。
巻頭は、江崎道朗・評論家「全面降伏する韓国」で、アメリカが昨年、北朝鮮攻撃をしなかった理由を四つ挙げています。一
に、オバマ政権下で国防費が削減され、かつ情報収集体制が弱体化していたこと。二は、日本問題です。半島有事の際に中国が尖
閣諸島などを不法占拠する恐れがあるにもかかわらず、日本が半島と尖閣を含む南西諸島の二正面に対応できる防衛力をもってい
ないことです。三は、韓国問題で、慰安婦問題で日本を攻め立てる韓国をみて「結果的に韓国に被害が出たら、ねちねち批判され
る。それはごめんだよ」と思ったとのことです。
四も、まさしく韓国問題で、文在寅政権が親北で、米軍に協力しない可能性があり、「地上軍派遣はしたくない」というのです。
福島香織・ジャーナリスト「金正恩を焦らせた米中の“戦争準備”」は、「南北融和ムードを横目に、米中の対北戦略は刻刻と
進んでいる」とし、かつ半島有事の有無にかかわらず、「世界は米中新冷戦構造という対立の枠組みを形成し始め」ていて、習政
権が集中的にプレゼンスを高めようとしているのはインド洋で、「東シナ海、尖閣諸島接続水域に攻撃型原潜が侵入したりもして
いる」ので、「あまたある米中の戦略的対立項目の一つにすぎない」北朝鮮問題だけに「(日本は)目を奪われているわけにはい
かない」と警鐘を鳴らしています。
用田和仁・元陸将「新防衛大綱が生死を分ける」は、政府が五年ぶりに「防衛計画の大綱」を見直し、今年末までに新大綱を策
定することになったことを評価しつつも、「当面の脅威は北朝鮮」ですが、「中長期的な脅威は中国であることを明確にすること
を躊躇してはならない」、「日米で中国に立ち向かう実態のある防衛力を構築できるかの曲がり角である」と危機感を露わにして
います。
古川勝久・国連安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネル元委員「暗躍する北のエージェント」は、シンガポールでの調査を詳述
し、東南アジアでの北朝鮮のエージェントの暗躍ぶりを描いています。「日本企業が知らないうちに北朝鮮とビジネスしてしまう
リスク」があるのです。
『文藝春秋』は、「米朝激突クライマックス」を緊急特集しています。
巻頭は、「トランプ『究極の選択』はいずれも日本の悪夢だ」との惹句を付した対談(手嶋龍一・外交ジャーナリスト×佐
藤優・作家・元外務省主任分析官「戦争か核容認か」)です。佐藤によりますと、米朝軍事衝突すると、太平洋戦争時の日本
人の死者(軍人、民間人を合わせ)約310万人に匹敵する死者が出る恐れがあり、核が使用されれば死者は1000万人を
超える可能性があるとのことです。手嶋は、「和戦両様の可能性を両睨み」し、「壊滅的な悲劇を避けるため、日本として何
ができるのかを知力の限りを尽くして考えなければならない」と提言しています。
麻生幾・作家「自衛隊トップの警告『3・18に備えよ』」は、自衛隊制服組のトップ、河野克俊・統合幕僚長・海将が、
パラリンピック終了後に「様々な事態が発生する」と予測し、「各自衛隊はすべて備えなければならない」と何度も口にして
いたことを紹介しています。
山下裕貴・元陸将×富坂聰・ジャーナリスト・拓殖大学教授「北の特殊部隊上陸、その時日本は」は、アメリカの3倍にも
のぼる、約20万人と想定される北朝鮮の特殊部隊員の脅威を心配しています。
仲井眞弘多・前沖縄県知事が『文藝春秋』に「翁長知事はハーメルンの笛吹き男だ」を寄せ、翁長雄志・沖縄県知事を厳
しく批判しています。辺野古はもはや争点ではなく、「沖縄本島の米軍基地のうち人口が密集する中部や南部にあるものは、
嘉手納基地より南ですべて返還される」ことになっていて、「(安倍政権は)一昨年には、県内で最大の面積の米軍施設だっ
た北部訓練場の過半に当たる四千ヘクタールもの土地の返還を実現」してくれたのであり、「訴え告発する沖縄」から「交渉
し解決の道を探る沖縄」への脱皮を提唱しています。
『文藝春秋』は、森信親・金融庁長官「金融庁長官『三期目の覚悟』」を巻頭とする「銀行淘汰が始まった」をも特集とし
て編んでいます。森によりますと、金融業界は「利ザヤ」で儲けることが困難になってきていて、とりわけ地域金融機関は人
口減少などにより経営環境が悪化しています。地域金融機関に求められる役割は、中小企業などへの財務を中心としたコンサ
ルティングとのことです。
みずほフィナンシャルグループは2027年3月までに7.9万人の従業員を1.9万削減すると発表しましたが、佐藤康
博・みずほFG社長が「メガバンクは対中国で団結せよ」で、AI(人工知能)やロボティクスなどを活用する構造改革や統
一的なキャッシュレス決済基盤を構築する「Jコイン構想」を熱く語っています。東京五輪のある2020年までに、QR
コードを表示したスマホをかざすだけで決済が出来るキャッシュレス化を目指しています。
銀行は安全・安定志向の人のための職場でなくなり、三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグルー
プもみずほフィナンシャルグループに追随し、三メガバンク合計で3.2万人超の人員が削減されることになり、預金を集め
ても融資先がない状況で、かつフィンテックが進展しているので、「人員、資産(店舗・システム)、預金の三つの過剰とい
う膿」を出しきらなくてはならないと、日本の銀行の苦境を、小野展克・名古屋外国語大学教授「銀行員がどんどん辞めてい
る」が活写しています。
人口減少やマイナス金利などにより地方銀行が苦境にあることをふまえ、『中央公論』は「地方銀行消滅?」を特集してい
ます。
特集巻頭で、森信親・金融庁長官が増田寛也・元総務大臣と対談(「ローカル経済再生、『この道』しかない」)していま
す。この対談でも、森は地銀による中小企業へのコンサルティング業務の必要性を強調し、東京の人材を地方に還流・活用す
ることを提唱しています。増田は、県単位で融資シェアを捉えて地銀の経営統合を規制する公正取引委員会に異を唱えていま
す。
大庫直樹・ルートエフ株式会社代表取締役「『競争不能地域』『事業継続不能地域』はどこか?」は、産業を3区分して地
域経済のポテンシャルを探ろうとしています。域外の顧客による宿泊業はインバウンド型、域外への販売にもつとめる製造業
はアウトバウンド型で、小売業や飲食業はローカル型です。金融業もローカル型で、市場規模は人口に連動します。ローカル
型の場合、人口減少が進めば、「(市場が)競争可能地域から競争不能地域となり、やがては事業継続不能地域にまで転落」
してしまいます。長崎県での銀行の経営統合についての公取の審査が長びいていますが、長崎県は事業継続不能地域と大庫は
断じています。大庫によりますと、そもそも競争不能地域での銀行の経営統合に公取が競争法を適用しようとすること自体が
適切でないのです。県単位をやめ、「地方部の損失を補うだけの儲けを出せる都市部と一緒にしてマクロ経済圏を定義すれ
ば、競争可能地域として見立てることができる」のです。たとえば長崎と佐賀を一体とみなすのです。また、完全独占下でも
赤字を出す事業継続不能地域の場合は、他の収益事業と固定費を共有できるように、銀行に兼業を許可することも検討すべき
となります。
銀行の経営統合が暗礁に乗り上げている長崎県の実態に、高橋徹・読売新聞東京本社調査研究本部主任研究員「長崎にみる
地銀統合という難題」が迫っています。人口減少は止まりませんし、「独占」よりも、「撤退」されては困るようです。
大手行も地銀同様に深刻だと、吉澤亮二・S&Pグローバル・レーティング金融法人及び公的部門格付部シニア・
ディレクター「やがて大手行も苦境に陥る」は分析しています。@資金余剰、A人口減少・少子高齢化、B銀行数過剰だから
なのです。フィンテックを活用しての経費率低減、新たな金融サービス需要の創造・補足やM&Aによる海外市場の
成長の取り込みなどが求められています。
『中央公論』は、「誤解だらけの明治維新」も特集しています。三谷博・跡見学園女子大学教授×苅部直・東京大学教授
「『佐幕』『勤王』の対決史観はもうやめよう」は、水戸藩の攘夷論には開国への道筋がついていたなど、イメージと歴史学
の常識とのギャップを指摘しています。薩長土肥の志士が「王政復古」を導いたとの「維新観」は間違いで、変革を最初に求
めたのは下級武士ではなく、水戸や越前をはじめとする大大名たちとのことです。
(文
中・敬称略、肩書・ 雑誌掲載時)
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