(記・2019年 4月 20日)

 二 階俊博・自民党幹事長は、「彼女が出なかったら、自民党系・保守系の候補者が誰かいますか?」と、『文藝春秋』 (聞 き 手:篠原文也・政治解説者「安倍後継は菅官房長官も十分資格あり」)で、小池百合子・都知事が再選を目指して出馬する場合、 全面的に協力すると明言しています。対韓国では自制すべきとし、安倍“四選発言”に関しては、「総理は頑張って おられる し、 国民の期待も大きい。ならば淡々と自民党政治を進めていくことがいいだろうとだけ考えています」と応じ、菅官房長官について は、「難しい時代に官房長官として立派にやっておられますね。それは素直に評価に値すると思っています。また、 彼はそう いう こと(ポスト安倍の総裁候補)にも十分耐えうる人材だとも思っています」と述べています。
 赤坂太郎「新元号『令和』決定で始まる『岸田vs.菅』」『文藝春秋』は、「岸田を『ポスト安倍』の軸に据え て眺める と、 党内力学はわかりやすい。岸田を推す安倍&麻生vs.『岸田ノー』の菅&二階という構図だ」とし、安倍が菅支持の決断を下す と、派閥単位で考えれば、菅の支持勢力が多数になると読んでいます。

 小沢一郎・自由党代表は、井手英策・慶應義塾大学教授との対談(「ドブ板も厭わぬ覚悟で挑め 政権を勝ち 取る野党共闘 構想」『中央公論』)で、国民は自民党を支持しているわけではないが、「不満の持って行き場がない」状況なのだか ら、そ の受け皿作りのため、野党は結集すべきとし、「国民の生活に関わる大きなこと。例えば消費税や、社会保障や、原子力発電 の問題。そういった基本的なことさえ共有できれば、野党は一緒にやっていけると思うのです」と力説していま す。

 会 田弘継・青山学院大学教授「ピント外れの『国民投票』改正議論」『中央公論』は、CM規制などについての論 議より も、フェイクニュースなどの拡散にソーシャルメディアが利用され、「民主主義の正当なプロセスを根底から覆す事態」 が生 じているので、「言論の自由、検閲の禁止、通信の秘密保護など、民主主義の根幹である権利を守りながら、これらの権利を 逆手にとってソーシャルメディアを利用し、民主主義を破壊しようとする力にどう対抗し、抑え込んでいくか」 が喫緊の 課題 であり、「現状では国民投票など絶対に実施すべきでない、とまで危機感を募らせている人もいることは、知っておいてほし い」と結んでいます。

 ハ ノイでの米朝首脳会談が物別れに終わった背景に、太田昌克・共同通信社編集員「米朝決裂 隠された第二ウラ ン濃縮工 場」『文藝春秋』が取り組んでいます。 アメリカが、寧辺以外の核施設の存在を確信し、その情報開示と、「WMD(大量破壊兵器)とミサイル関連活動の凍結」を 求めたからだそうです。太田は、「変数が多すぎて正直、今後のシナリオを言い当てる自信はない」と吐露して います。

  昨年11月、日韓議員連盟を退会した城内実・環境副大臣・自民党衆議院議員が、『文藝春秋』に「韓国には 『報復』と 『謝罪要求』を」を寄せています。韓国政府による自衛隊旗の掲揚自粛要求や「元徴用工問題」により、「韓国は限度を 超え ている。議連が話し合いをして解決できる次元ではない」と決断したそうです。 韓国にとっては、「日本をバッシングすることこそが“元気の素”」ですが、日本がとるべき策は、「“コリア・パッシン グ”です。すなわち、韓国をスルーすること」、つまり「最低限のお付き合いは致します。ただ、信頼関係が崩 れてし まった 以上、残念ながらこれまでのようなお付き合いはできません」とのことです。

 『Voice』は、「米中デジタル戦争」を特集しています。
 田中道昭・立教大学教授「GAFA対中国メガテック」は、「米国式の自由市場型資本主義」と「中国式の国 家統制型 資本 主義」との戦いだと捉え、「米中の戦いは十年、二十年、三十年の中長期に及ぶ」と予想しています。
 小谷賢・日本大学教授「ファイブアイズ諸国と連携せよ」は、サイバー・インテリジェンスをめぐる米中新冷 戦下、日 本 は、「ファーウェイ問題は産業上の問題であると同時に、政治や安全保障上の問題」でもあり、「今後のサイバー分野におけ るファイブアイズ諸国との連携をめざしていくべき」と提言しています。ファイブアイズとは、イギリス、カナ ダ、オー スト ラリア、ニュージーランドにアメリカを含めた五ヵ国のことです。
 ファイブアイズとの緊密な連携が必要と、角南篤・笹川平和財団海洋政策研究所所長「テクノ地政学から見る 新冷戦」 も言 います。「(日米で)核心的技術を共同開発し、それを基にした共通のプラットフォームを構築することで、これまでにない 同盟関係を築き上げることになる」のであり、「ビッグデータを基盤にした新たな時代の経済大国中国の隣国と して、こ れか ら日本が核心的技術をめぐる覇権争いをどのように生き残っていくのか、いままさに岐路に立っている」のです。

 「インターネットは中国のような 独裁主義国のパワーを弱めるだろう、と言う考えが主流でした」が、「現実には、大 規模 で精密な監視システムとデータ収集の方法を開発する」ことができ、「中国がAIの競争で勝てる潜在力をもっているポジ ションにあるといえる。しかし問題は、AIが普及すると何百万人もの人が失業するということです。政府が彼 らに仕事 を提 供し続ければいいですが、やめてしまうと重大な問題になります」と、ジェイミー・バートレット・英ジャーナリスト(取 材・構成:大野和基・国際ジャーナリスト)「ネットは権威主義国を転覆させるか」は見ています。

 『Voice』 は、総力特集として「天皇と日本人の未来」を編んでいます。
 巻頭は、片山杜秀・思想史研究者・慶應義塾大学教授「いまこそ『国体護持』を叫ぶとき」です。「現代日本 の象徴天 皇は 行動を抜きにして国民の尊敬を集められる時代ではない」ですし、「神道関連の儀式をあまり強調しすぎると、天皇の神性が 民主主義にそぐわない。しかし歴史伝統と神性を抜きにした皇室はありえません」し、「歴史を喪失したノンポ リの国民 が皇 室の自壊を促してしまうリスクから国体を守らなければいけない」ので、「天皇の尊厳をパフォーマンスにのみ求めるようで は、国民とのあいだに信頼関係の綻びが生じるかもしれない。その意味で、かつてとは異なる文脈で『国体の護 持』を叫 ぶべ きだ」とのことです。
 苅部直・東京大学教授「『象徴』はどこへゆくのか」は、主に和辻哲郎の解釈による天皇のもつ「象徴」の機 能につい て論 じています。「単に『国民』の共同体としての一体感を演出するだけには尽きない。それは同時にデモクラシーの実践を要求 するものでもある」と記しています。苅部の結びは、「現天皇は『国民とともに歩む』としばしば発言されてき た。そし て皇 后陛下とともに、国民と同じ地面に立つ姿勢で、その幸福を願い、悲しみによりそうことを方針としてこられた。その意味で 両陛下の姿勢は、和辻の期待した皇室のあり方よりも、はるかに戦後民主主義的なのである。この方針は現皇太 子の徳仁 親王 と皇太子妃殿下にも引き継がれるだろうが、新しい皇室ではどのような形で具体化されることになるか。国民として大きな期 待を込めながら見守りたい」です。

 『中 央公論』は、「新しい象徴の時代へ」を特集しています。
 巻頭は、原武史・放送大学教授ほかによる座談会「これからの象徴天皇制を考える」で、河西秀哉・名古屋大 学大学院 准教 授は「日本という共同体からこぼれ落そうな場所に足を運び、『国民統合の象徴』として緩やかな統合を図ろうとしてきた。 しかしこれは、政治の不作為を覆い隠してしまう可能性もあります。天皇が行くことでなんとなく不満が解消さ れてしま う。 政治への不満を表出するエネルギーが減退してしまう」と指摘しています。
 天皇陛下の「生前退位のご意向」を受け、首相の私的諮問機関「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会 議」の座長 代理 を務めた御厨貴・東京大学客員教授は、「有識者会議への批判に応える」を寄せ、「憲法違反か否かを云々し始めると議論が 止まってしまいますし、皇室典範に手を付ける時間は到底ありません。ゆえに、有識者会議ではプラグマティッ クに徹 し、退 位問題に絞った特例法の制定が最速の方法と結論づけたのです」と明かしています。

  上の特集には、羽毛田信吾・元宮内庁長官「国民の苦しみ悲しみとともに」もあります。羽毛田 は、『文藝春秋』では渡邉允・元侍従長と対談しています(「平成から令和へ継承すべきもの」)。この対談は、「改元&ご 成婚60周年総力特集『素顔の両陛下』永久保存版全142頁」と銘打った「天皇皇后両陛下123人の証言」 の一環で す

(文 中・敬称略、肩書・ 雑誌掲載時)