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ルロス・ゴーンとともに金融商品取引法違反で逮捕されたグレッグ・ケリー・前日産自動車代表取締役が『文藝春
秋』でインタビューに応じています(「西川廣人さんに日産社長の資格はない」)。「彼(ゴーン)の右腕だったこ
とは一度もありません」と述べ、西川が北米日産社長となった2007年からは直属の上司部下として「ビジネス上
でかなり近しい関係」を続けてきたのであり、「西川氏が逮捕されないのなら、私も逮捕されないはず」、ゴーンの
退職後の雇用契約について疑問があるのならば、「社内で処理、解決できたはず」と主張し、「(西川に)社長を続
ける資格はありますか」の問いに、「大いに疑問をもっています」と応じています。
任正非・華為技術CEO「我がファーウェイは無実だ」『文藝春秋』には、「渦中の中国『ITの雄』創業者イ
ンタビュー」との惹句が付せられています。日本企業との高い補完性を語り、「トランプ大統領のファーウェイ
への攻撃は私たちの競争相手に有利なはずですが、エリクソン、ノキア、クアルコムなどのCEOの発言は中立
的で友好的」だとし、「今までのファーウェイの行動への信頼が背景にあるからだと思います」と応えていま
す。
高口康太・ジャーナリスト・翻訳家「アメリカが神経尖らす『ファーウェイ問題』とは」『中央公論』は、技
術開発に資金を注ぎ、先端技術を手に入れ、「AI分野でも世界のトップ企業」を目指しているファーウェイ
の、日本企業からの部品調達額は2018年には日本の対中輸出額の4%に相当する約6700億円に達してい
て、「技術トレンドと米中関係の変化がもたらしたファーウェイ問題は、日本企業にとっても対岸の火事ではな
い」と警鐘を鳴らしています。
森聡・法政大学教授「抜き差しならない米中『技術覇権』競争」『中央公論』は、「注目すべきは、中国が軍
民融合戦略をとっていることにより、米国側は産業競争と軍備競争を結びつけ、また中国が国家情報法を制定し
たことで、米国側は情報通信と安全保障、さらには産業競争をも結びつけて考えるようになったという事実だ」
と指摘し、「日本政府には、本邦企業・団体による中国との研究・開発活動の実態把握と、安全保障・産業・情
報通信を見渡す高度な戦略的判断が求められ、それに必要な体制の構築が急務となろう」と提言しています。
『中央公論』での佐橋亮・東京大学准教授との対談(「超大国の激突 最前線とその背景」)で、川島真・東京
大学大学院教授は、日本は、米国が米国と同レベルの「包括的で強い対中制裁ルール」を求めてこないようにす
ること、対中関係改善に「前のめり」になり米国から疑念を抱かれないようにすること、と説き、さらに東アジ
アの安全保障や中国関連で日米が常に一致するわけではないことにも留意すべきと展開しています。佐橋は、日
本独自の戦略を持つべきとし、自由貿易体制の擁護はもとより、「民主主義の後退さえ議論される時代に、アジ
アで公正な選挙、政治の透明性、腐敗撲滅などを浸透させていくことが、日本のリーダーシップにも、利益確保
にもつながっていきます」と力説しています。
「日本としてはデジタル圏が中国色に染め上げられることがないよう、米欧と連携を強めなければならない」
と、秋田浩之・日本経済新聞コメンテーター「デジタル圏の『紅化』を阻め」『Voice』は明快です。「日
本は安全保障上、米国に大きく依存している」ので、米側と協調するのは当然で、「そのうえで、米中覇権争い
に連動して日中対立が過熱するのを防ぐため、中国との要人交流や安保対話も進めるのが上策である」とのこと
です。
日高義樹・ハドソン研究所首席研究員「中国は大英帝国にはなれない」『Voice』は、「中国は食料と石
油を輸入に頼るほかない。この状況は、アメリカと根本的に違っている」、「アメリカに勝つだけの軍事ソフト
をもっていない」、だから「第二のイギリスになれないことは明白である。ましてアメリカに戦いを挑み、アメ
リカに代わって覇権を獲得することなど、とうてい不可能である」と断じています。
同じ『Voice』で、安田峰俊・ルポライター・立命館大学客員協力研究員「天安門事件、三十年目の真実」
は、「この三十年で、以前と比べて大幅に清潔で便利で豊かな社会が実現し、中国の国際的地位が著しく向上し
たことで、国民のあいだでは現体制をそれなりに評価する考えも広まっている」とし、「(天安門事件から)三
十年目の区切りの年を迎えたことで、(天安門事件の)風化はいっそう進んでいくはずだ」と見立てています。
中西輝政・京都大学名誉教授「『軽薄』な国際社会にのまれるな」『Voice』は、
「平和こそが、平成に引き続き、令和の時代、そしてその先もわが国において最重大の国益である―。私たち
は、いま一度このことを胸に刻み、日本の針路を論じなければならないのです」と結んでいます。
韓国に亡命した太永浩・元駐英北朝鮮公使が、『文藝春秋』に見解(「拉致問題は結局カネ次第だ」)を明らか
にしています。金正恩は、「『日本は食糧支援などの経済協力のカードを切る』と判断すれば、(安倍首相に)
喜んで会おうとするでしょう」と予見し、核は北にとっては「国家全体を支える『礎』」ですから、核放棄はあ
りえない、と断言しています。「韓国にいる脱北者は約三万二千人。これが十万人になった時、金正恩体制の崩
壊速度は一気に高まるでしょう。脱北者一人を韓国に連れてくるのにかかる金額は約三百万ウォン(約三十万
円)」、「韓国が米国から戦闘機一台を購入する際に支払う代金で、脱北者十万人を韓国に連れてくることがで
きるでしょう」と提唱しています。
平野聡・東京大学教授「韓国の『扱い方』は清朝を手本とせよ」『Voice』は、「あくまで最低限共有し
うる規範に基づいて、よりグローバルな基準に立つ側が、狭い基準に基づいて礼儀を失する側に対して、有無を
言わさず規範を遵守させた」 四百年前の清の対朝鮮政策を詳説し、「日本と韓国が第三国との関係で最低限共
有する規範=今日でいえば国際法や一般的な国際的礼譲に則して、韓国の政治エリートが自ら逸脱を修正せざる
を得ない局面に持ち込むことが必要である」と強調しています。
小沢一郎・衆議院議員「野党結集で枝野さんを総理にできる」『文藝春秋』は、現政権の政治を「弱肉強食の政
治」と斬って捨て、「選挙の時の届け出政党を一つ」にする「日本版オリーブの木」方式で野党を結集させれ
ば、多数派を形成しうるとし、「枝野さん、君子豹変せよ。そして、共に安倍政権と闘おう―私は今、強くそう
願っています」と呼びかけています。
松井孝治・慶應義塾大学教授「真の野党再生論」『Voice』は、「野党は批判先行で、安倍政権の代わり
に『何をやるのか』が提示できず、有権者の心を?めていない」、「かつて既得権益打破を唱えた野党が、高齢
世代というコア支持層の既得権益にとらわれてしまい、身動きが取れないように見える」と論じ、維新の会に注
目しています。地下鉄、水道、教育など地方の生活に密着した課題にメスを振るう取り組みなど、「具体論とし
ての分権やまちづくりの核心的事例を支える統治機構改革は、中央集権型政治への対立軸となりうる」と期待し
ています。
橋下徹・元大阪市長・元大阪府知事は、『Voice』(「大阪の改革から『実行力』を学べ」)で、「大阪
で都構想を実現して新たな大都市の仕組みを示し、道州制という日本全体の政治行政の仕組みの抜本的改革につ
なげていってほしいですね」と述べています。
『中央公論』のコラム「永田町政態学」には、「(新元号「令和」を発表した)菅官房長官が『ポスト安倍』
の有力候補として急浮上している」とあります。
濱口桂一郎・労働政策研究・研修機構研究所長「高齢者を活かす雇用システム改革とは」『中央公論』は、「壮
年期以降の賃金制度は、中長期的には生活給的な年功賃金制度から、個々の労働者の従事する職務に応じた職務
給の方向に移行していかざるを得ない」とし、「七十歳までの就業機会の確保」のためにもと、「高齢者派遣シ
ステムの構築」を打ち出しています。
岩越和紀・高齢者安全運転支援研究会理事長「高齢者よ、運転をあきらめるな!」『文藝春秋』によります
と、「運転で大切なのは“技術力”」で、技術力のうち最重要なのは「ブレーキ力」とのことです。
『中央公論』には、「第20回読売・吉野作造賞発表(受賞作・牧野邦昭『経済学者たちの日米開戦』)」があ
りました。
(文
中・敬称略、肩書・ 雑誌掲載時)