安
倍晋三・内閣総理大臣が「第一次政権の失敗が、今の第二次政権では大いに役立っている」、「日本が万が一、海外
から侵略を受けた時、日本を守るために闘ってくれる唯一の国が米国です。その米国の大統領と信頼関係を築くこと
は、日本の総理大臣の責任だ」などと述べています(聞き手=田ア史郎・政治ジャーナリスト「失敗が私を育てた」
『文藝春秋』)。また、「あと二年、全力で結果を出すことが私の使命だと思っています」と総裁四選を否定してい
ます。
御厨貴・東京大学名誉教授×片山杜秀・慶應義塾大学教授「安倍政権は『桂園時代』に似ている」『文藝春秋』
は、安倍総理の通算在職日数が11月20日に桂太郎を抜き、歴代1位になる理由を探っています。桂(約8年)、
西園寺公望(約4年)が交互に担ったのが「桂園時代」ですが、「桂を支えたのは官僚で、西園寺を支えたのは政党
(政友会)」との御厨の指摘に、片山は「今の安倍政権は、党と官僚の両方を上手に手なずけていて、『桂園時代』
を一人でやっている感じ」と応じています。また、片山の見立ては、「(憲法改正は)真面目に考えていない雰囲気
があります」、「実は『アメリカと仲良くしながら天皇と国民の和を守る』という現代日本で大多数が許容できる程
度以上のことはやっていません」、「“右”よりも“リアリズム=安全運転”」です。
「トランプ大統領がシリア北部から米軍を撤収させる決断を下しました」と、三浦瑠璃・国際政治学者「クル
ド人を見捨てたトランプの孤立主義」『Voice』は書き起こし、「トランプ大統領の孤立主義的な気分はわ
ずかも消えておらず、むしろこれからが本番なのではないかとさえみえます」と危惧しています。
宮家邦彦・外交政策研究所代表「日米同盟を『当然視』するな」『Voice』も、「(トランプ大統領の決
定が)世界中の米国の同盟国に対し『米国は信頼できない』とのメッセージを送ったことは間違いない」、「日
米安保同盟を当然視せず、しかも、それを健全に保つための努力を怠らない知恵がこれまで以上に必要になって
きている」と警鐘を鳴らしています。
同じ『Voice』で、杉田弘毅・共同通信特別編集委員「中東撤退が示す米国の『頼りなさ』」は、「西欧
ではトランプ離れが加速している」、「西欧からすれば、ロシアやイランと安定した関係を築き、テロ組織を封
じ込めることができれば、頼りにならない米国との同盟は不要、といった思い切りの良さが感じられる」と分析
し、「日本の米国依存は現実を反映した戦略ではない。だが、依然日本は思考停止に闇のなかにいる」と憂慮し
ています。
細谷雄一・国際政治学者「日本は二十一世紀のイギリスになれるのか」『中央公論』には、「第二次世界大戦
後にイギリスが担った役割を、日本が担うべきではないか」、「二つの世界大国の狭間で平和と安定、国際協調
を持続させるために貢献できるのか。日本国民が、その問いに肯定的な答えを見いだすことを期待したい」とあ
ります。
岩田明子・NHK解説委員「安倍晋三vs.文在寅『激突900日』」『文藝春秋』は、韓国との対峙を時系
列的に追い、「『意外に冷静な対話ができるかもしれない』という当初の受け止めは修正を迫られたと言わざる
を得ない。韓国に国際法遵守を求めつつ、国際社会の協力を得る強かな外交が展開できるか。安倍は今、安全保
障や経済への影響を食い止め、解決に向けた戦略を模索し続けている」と結んでいます。
゙良鉉・韓国国立外交院・外交安保研究所教授は西野純也・慶應義塾大学教授との『中央公論』での対談
(「日韓関係を遮る『三重の葛藤』」)で、2010年代の日韓関係は三つの変化が生じ、「いわば『三重の葛
藤』を抱える時代に入った」と論じています。まず、韓国で政権交代があっても「日韓関係の改善のきっかけに
はならなくなったこと」、次に「司法当局による歴史問題関連の判決が、韓国政府の対日政策を大きく左右する
ようになったこと」、三つ目は「日本でもまた『政経分離の原則』が変化したこと」です。また「(安倍政権
は)これまでの政権よりも歴史認識問題に後ろ向きである」と韓国では見られているとのことです。
10月18日にソウルで発生した親北朝鮮大学生団体メンバーによる在韓アメリカ大使公邸乱入事件が、「在
韓米軍撤退のスケジュールを早めることに繋がった」とのアメリカ・インド太平洋軍関係者の言を、麻生幾・作
家「韓国は米国に切り捨てられる」『文藝春秋』は紹介し、「そもそもアメリカ政府は、ここ数ヶ月、在韓米軍
の撤退、大幅縮小への“密かなる動き”を急ピッチで開始していた」と記しています。麻生の結びは、「十一月
二十三日、ムン・ジェイン大統領が破棄を決めた日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)の期限を迎える。
『その日は、在韓米軍撤退の、文字通りの“最終期限”でもある』(同関係者)」です。
『文藝春秋』の「『反日種族主義』を追放せよ」は、韓国で出版された『反日種族主義』の著者6人のうちの
3人による座談会です(金容三・「ペン&マイク」大記者・李承晩学堂講師×鄭安基・ソウル大学経済研究所客
員研究員×朱益鍾・李承晩学堂管理理事、司会=黒田勝弘・産経新聞ソウル駐在客員論説委員」)。朱は「徴用
工や慰安婦への補償などは事実上要求することはできない」、金は「韓国が日本に対して主張していることは、
合理的で理性的な根拠がひとつもない」、鄭は「日本側が韓国への謝罪感情や同情主義を捨てるべきであり、安
易な妥協をしない方が韓国のためになる」などと発言しています。
『反日種族主義』の編著者の李栄薫・ソウル大学元教授・落星台経済研究所所長は、『Voice』で、洪
?・『統一日報』主幹と対談(「低級な物質主義を克服せよ」)しています。「今日の二十代と三十代は、四十
代・五十代よりも思考がはるかに開放的です。彼らは豊かな時代に育ったため、日本のアニメ文化や米国のハリ
ウッド文化に慣れている世代です。私たちはこの二十〜三十代が『反日種族主義』に対する私たちの批判を受け
容れ、新しい歴史意識をつくる主役になるのではないか、と期待しています」と李は言っています。
「(香港の)デモのそもそもの背景は、中国習近平政権のかなり強引な香港の中国化政策だ」、「デモの本質
は香港の中国化への抵抗であり、西側の普遍的価値観と中共的全体主義的価値観の戦い、つまり米中対立の代理
戦の意味合いもある」と、福島香織・ジャーナリスト「米中『代理戦争』の主戦場」『Voice』は断じてい
ます。
ニーアル・ファーガソン・歴史学者「米中の冷戦は長期化する」『Voice』は、「貿易戦争は最初のス
テップにすぎません」、「地政学的な次元もあります」、「米中のライバル関係が明らかな分野がたくさんあり
ます。そのため、米中の冷戦は長期化するでしょう」と予見し、「中国に支配されたアジアのなかで、アメリカ
側につくよりもいい選択肢は日本にはない」と見ています。
国債の金利が名目GDP成長率よりも低い状態が続けば、財政が安定化するので、小林慶一郎・経済学者「こ
れからの日本の経済政策はどうあるべきか」『中央公論』は、「『金利ゼロ、ゼロ・インフレ』の下で、高い実
質経済成長率を目指すべき」と提言しています。
新しい学習指導要領により、高校国語に「論理国語」と「文学国語」が新設されたことを受け、『中央公論』
は「国語の大論争」を特集しています。
新学習指導要領の審議に関わったロバート・キャンベル・国文学研究資料館長は、紅野謙介・日本大学教授と
の対談(「『広義の文学』の可能性を求めて」)で、「文学と論理という二項対立自体が間違っている」としつ
つも、「有名作家の作品だけを出題し続けて、そこから若い人たちの思考能力や言葉の感覚を試験で問う形式は
限界に来ている」、「教育現場の文章と社会の中で使われている日本語が、年々乖離している」と問題提起して
います。
伊藤氏貴・明治大学准教授「『論理国語』という問題」は、「『論理』と『文学』とを分けるような非『論
理』的な改革は、『ゆとり』以上に悲惨な結果を招きかねない。日常の言語活動における『論理』は、むしろ
『文学』に近いことを思えば、『文学国語』というこなれない名前の科目の中でこそ、真に『実用』的な言語習
得も可能なのではないか」と、新学習指導要領に真っ向から反対しています。
(文
中・敬称略、肩書・ 雑誌掲載時)