「年の瀬の永田町に透けるのは、菅vs.岸田文雄・自民党政調会長の高揚感なき暗闘である」と、赤坂太郎「『桜
を見る会』で再浮上する岸田総裁論」『文藝春秋』は説き、「安倍の長年の盟友で、改憲を重視する衛藤晟一・少子
化対策担当相ら安倍周辺の保守派も、『ポスト安倍』に岸田を担いで恩を売り、ハト派イメージの強い岸田を振りつ
けて改憲を目指す方が現実的だと思案し始めている」と見ています。
菅官房長官系の二人の閣僚が更迭されましたが、『中央公論』の「永田町政態学」には、「菅氏は政権の『火消し
役』をこなしつつ、首相の後継争いにどのような戦略を描いているのか―。自ら打って出る以外にも、同じ神奈川県
選出で面倒をみてきた河野防衛相の出馬を支援し、影響力を行使する選択肢もある。菅氏の動向から目が離せない
日々は続きそうだ」とあります。
「麻生太郎『安倍総理よ、改憲へ4選の覚悟を』」『文藝春秋』で、副総理は「世界中で隣国と仲の良い国などあ
るのかね」と、韓国には「金融制裁に踏み切ったり、やり方は色々あります」とし、中国とは友好ではなく「共益」
で行くべきとし、「日本はこの数年間のうちに、中国に負けないだけの国力を蓄えておかねばなりません」と述べ、
「安倍総理が本気で憲法改正をやるなら、もう一期、つまり総裁四選も辞さない覚悟が求められるでしょうね」と展
開しています。「二大政党制はうまく行かなかった」ので、「自民党内で政策競争が起きるような形にしなくてはな
りません」ので、「二大派閥に収斂させていく必要がある」と断じています。
牧野愛博・朝日新聞編集委員「GSOMIA『文在寅迷走』の全内幕」『文藝春秋』は、「何の合意もないま
ま、日韓首脳会談に突き進めば、徴用工判決、GSOMIA、輸出規制措置のどれかの問題が必ず破綻する」と
日韓関係の改善を困難視していて、「(韓国の)GSOMIA破棄撤回は、日米韓を待ち受ける更なる苦難への
序曲なのかもしれない」と予見しています。
「韓国高校生は『反日教育』に反対します」『文藝春秋』は、「(ソウル市内の高校の生徒が)『学校から反
日行為を強要された』として抗議するという異例な事態が発生」し、生徒たちが立ち上げた団体の代表(金花
浪・仁憲高校三年生)とスポークスマン
(崔仁鎬・仁憲高校三年生)が語ったものです。「(マラソン大会で)反日スローガンの書かれたポスターを持たされ、大声で叫べと言われ、従わざるをえなかったのです」、
「どれくらい日本製品の不買を実践したか、一人ひとりに発表させる先生もいました」などと明かしています。
春木育美・早稲田大学韓国学研究所招聘研究員「『ヘル朝鮮』世代、韓国二十代の異変」『中央公論』は、
「ヘル朝鮮とは、韓国社会の不条理なさまを地獄のようだと喩えた造語」で、「韓国の二十代は、いま自分たち
が置かれている境遇を『ヘル朝鮮』と自嘲する」と紹介しています。「階層上昇機会が閉ざされた不条理な身分
社会」と見ているからです。二十代が「最も日本に対する好感度が高い世代」ですが、「(日本製品不買運動
に)最も積極的に参加」したのも二十代だと指摘しています。「日本に対する眼差しには極めてアンビバレント
な心性が渦巻いており」、「束になって声を上げることで政府や政治を動かすことができるという実体験や政治
的有力感」が共有されていて、「共有する思いの束が時には韓国政府や上の世代に、時には日本に向かって発露
されているのだ」そうです。
山内昌之・東京大学名誉教授「中東への関与、韓国への不関与」『Voice』は、「韓国のみならずイラン
にしても、アメリカが大きく関与している以上は、好むと好まざるとにかかわらず、日本の外交戦略上の大きな
論点となる」とし、「イランとも友好関係にある日本が(アメリカとイランの)対話を仲介する可能性を探る必
要がある」と力説しています。日韓については、「(韓国はゴールポストを動かすと表現されてきましたが)
ゴールポストさえ明示されなくなっている」ので、「わが国がとるべき態度は根拠のない譲歩をせず、『現状維
持』で些かも問題はないと毅然とすることだ。日本人がGSOMIAの勝ち負けを議論する愚も避けるべきだ。
思い切って比喩的にいえば、中東に関与するレベルと同程度くらいまで、韓国への不関与の姿勢を保つというこ
とだ」と主張しています。
「香港の中年世代には『自分たちは何もしてこなかった』という負い目」があるので、「(暴力行為をも辞さ
ない若者たちを)無意識のうちに『子どもたち』と呼ぶ。そこにこの運動の本質がある」、「抗議運動が過激化
してもなお、これほど長期にわたって多くの市民の支持を失わない、一つの鍵であろう」と、星野博美・作家
「ぼくたちの戦争」『中央公論』は、分析しています。
「深?に近い山間部に、『反テロ訓練センター』の建設予定」があり、「香港は新疆のウイグル人と同じよう
に、洗脳と監視のもと、厳しいイデオロギー統制とアイデンティティの喪失に直面するかもしれない」と、福島
香織・ジャーナリスト「『大学戦争』の敗北とウイグル化の危機」『Voice』は憂慮しています。
新年1月11日に台湾総統選がありますが、小笠原欣幸・東京外語大学准教授「米中対立下の台湾総統選」
『Voice』の見立ては、中国からの圧力と香港情勢などから、現職の蔡総統優勢です。「台湾海峡の波が高
くなるのは間違いない。台湾の『繁栄と自立のジレンマ』は深まっている。誰もが両方を望みたいが、中国はそ
れをさせない」、「日本は、台湾海峡の現状維持のためにやれることをやっていく必要がある。武力行使への強
い反対を日本社会全体で共有し、日台の経済社会交流を一層促進していくべきだ」と提言しています。
同じ『Voice』の瀬戸川宗太・映画評論家「全体主義と闘う映画」には、「中国共産党が現に行なってい
る政治や行動を見ていると、SF小説・映画のなかだけに存在すると思われていた未来社会そっくりなのに驚
く」とあります。「近未来SF映画が公開されるたびに、将来の監視社会や独裁者の危険性を饒舌に語るリベラ
ル派マスコミが、いざその現実を前にすると、同種の映画についてまったく沈黙してしまうのはなぜか。不思議
でならない」と結んでいます。
宮家邦彦・外交政策研究所代表「防衛費を増額し、抑止力を高めよ」『Voice』は、「米中の対立は今後
最低二十年間は続く」、「中国が尖閣諸島や歴史問題などで日本に対し戦略面で譲歩を行なうことはない。いま
こそ日本は防衛費を一層増額し、中国のこれ以上の現状変更を認めない抑止力を拡充すべきである」と提唱して
います。
藤原正彦・作家・数学者「『英語教育』が国を滅ぼす」『文藝春秋』は、英語教育に異を唱えています。「壮
大な(時間と労力の)無駄」であり、「日本人としての自覚の妨げ」、「教養を積む妨げ」となると難じていま
す。
齋藤孝・明治大学教授は、鳥飼玖美子・立教大学名誉教授との『中央公論』での対談(「ペラペラ英語は『自
己植民地化』につながる!」)で、「母語がありながら英語にこだわるのは、ある意味で植民地的な悲哀を感じ
ます」と難じています。鳥飼は、「今の日本は、やたらと英語を話すことにこだわっていますね。これはもう、
“自己植民地化”そのものだと思うときがあります」と応じています。また、「組織のトップや担当者が無理し
て英語で語り合うより、それぞれ言いたいことを母語で言い合い、プロに訳してもらったほうがスムーズに進行
するし、間違いも少ないんです」と鳥飼は言っています。
文部科学相が12月17日、大学入学共通テストへの記述式問題の導入の見送りを表明しました。紅野謙介・
日本大学教授「国語記述式試験導入を中止せよ」『Voice』は、「一月後半、二週間という期間にわたり、
それぞれ何千人かを一堂に集めて厳密な採点にあたるというのは、いまだかつてない体験のはずである。実にこ
の上なく危険なチャレンジが入試の中の入試、『大学入学共通テスト』で行われようとしている」との導入への
真っ向からの反対意見です。
中村高康・東京大学大学院教授「『入試を変えれば教育が変わる』という発想こそ変えよ」『中央公論』は、
まさしくタイトルにあるように「大学入試を変えれば教育を改革できる」は、「最大の神話」と断じています。
人手不足であるにもかかわらず、改革メニューを押し付けるようなことはやめ、「困っている現場を救うための
支援」をと論じています。
(文
中・敬称略、肩書・ 雑誌掲載時)